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横須賀 浄楽寺、天神島と立石公園 [仏像]

2009年9月5日

一ヶ月前に予約を入れて、ようやく浄楽寺を訪れることが出来た。
以前、関東では無いと言われていた運慶作の仏像がここにある。

昭和34年に久野健(くのたけし)氏が、毘沙門天像の体内から木札を見つけ、
そこに文治五年(1189年)大仏師運慶が、小仏師十人を従えて作ったと書かれており、
不動明王像からも同じ納入物が発見されたことで、運慶の作であると認定された。

当時、運慶が興福寺関係の僧であることは判明していたが、
この木札には塔頭の名前までも記載されており、
後世では分かり得ない記述があった。
また、大仏師になった時期も不明確であったが、
文治五年には大仏師の地位にあったことが明確に記されていた、
この発見に興奮している様子が彼の著書「仏像」に書かれている。

制作時期としては、円成寺にある大日如来像が20歳頃の作品と言われており、
ここ浄楽寺の作は30代の作と考えられている。
静岡にある願成就院の諸像より4年後の作になる。

大御堂 浄楽寺

久野氏の著書で見た本堂の写真とはかなり変わっている。
屋根も茅葺から瓦になっている。おそらく建て替えられたのだろう。
(1)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_8836.jpg

<阿弥陀如来像>
螺髪は小さいが高さがあり先が尖る。額は小さい。
頬を立体的に張りださせ奥行きを作り出すことに成功している。
特徴ある唇の形も立体化に寄与している。
肩から二の腕までの膨らみをきれいに肘まで持っていく技術、
また運慶の特徴とも呼べる手の厚みがよく出ており、
慶派のリアリズムは、仏像と人々の距離を無くしていく役割を、
担わせているように思える。
この像で一番素晴らしいと思ったのは、
左足の膝頭から右肩にかけて彫られた衣文の流れである。
この衣文の深さを自由自在に操っている技術に驚くと共に、
この角度から運慶も覗き見て「良し」とつぶやいた気がした。

<勢至菩薩(左)と観音菩薩像>
左右対称に作られた勢至と観音菩薩像である。
しかしながら、明らかに左右の勢至菩薩は、
違う仏師によって彫られたと思われる。
足指の表現、再現さに大きな違いがあり、左の勢至菩薩に比較して
観音菩薩は持物を持つ指先にまだ藤原時代の名残が見える。
また衣文の彫りも浅く、慶派の特徴である豊かで柔らかい手が、
若干薄い気がする。
写真で見るだけでは分からないが、唇の立体性も勢至菩薩の方が、
厚みがある。
どちらも阿弥陀像側の足を曲げるが、曲げた足の裳と反対の裳で、
ひだの厚みを変えている点などは、
大仏師である運慶の指示であったろうと思われた。

<毘沙門天像>
顔の彫りが素晴らしい。
スタイルも東寺の四天王像に比べてすっきりとした印象を持つ。
怒りの顔も抑えつつも、頬から顎にかけての力強さは意思の強さを表している。
やはりこの像の手も繊細に作られていることを感じる。

<不動明王像>
最初の印象はアンバランス。とくに肩から二の腕にかけてのたくましさと、
手首から先が赤ちゃんの手のような小ささ。
それは足にも表れていて、甲が異様に高く足の長さは短い。
つまり子供のような体型を元に内側からこみ上げる怒りを、
筋肉の盛り上がりで表現したかのようだ。
ただの筋肉質の像に仕上げていないところが運慶らしいと感じた。

細かい部分にまで手を抜かず、肌部分には繊細なまでに膨らみの曲線を追い求め、
衣文の襞にはその深さだけを求めず、
徹底的にライン全体をあらゆる角度から整えていく技法が、
運慶のすごさだと改めて思った。

天神島(佐島公園)

浄楽寺をでて天神島に向かった。
海洋動植物の宝庫として貴重な場所だそうである。
岩礁で周囲を覆われた小さな島で30分もあれば一周できてしまう。
宮崎県や和歌山にある鬼の洗濯岩と言われる程の規模はないが、
それなりに波によって作られた造詣が楽しめる。
(2)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_8866.jpg

天神島沖の岩礁に休むウミネコたち。
(3)EF200mm F2.8L USM
IMG_8878.jpg

岩礁2
(4)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_8903.jpg

ハマカンゾウ(浜萱草)の花と奥には江ノ島。
(5)EF200mm F2.8L USM
IMG_8914.jpg

立石公園

佐島の大楠漁港からバスに乗り立石公園へ。
予定ではこの漁港でおいしい魚を食べるつもりだったが、
お腹が減っておらず、残念ながら今回は断念する。
魚を扱っているお店には、たくさんの買い物客が集まっていた。

安藤広重が『相州三浦秋屋の里』を描いたことで有名な景勝地。
立石とぼんてんと呼ばれる岩場の間に富士山が見えるそうで、
落日の絶好ポイントとなっているそうである。
この日は残念ながら富士の姿は拝めなかった。
(6)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_8949.jpg

立石を砂浜から写す。
約25000年前に積み重なった地層が固まり、波に削られて出来上がったもの。
地質は凝灰岩で、高さ約12m、周囲約30mとある。
(7)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_8977.jpg

「ぼんてん」の岩礁と自生する松。
(8)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_8987.jpg

岩礁で素潜りの準備をする男。
(9)EF200mm F2.8L USM
IMG_8999.jpg

ハマカンゾウとぼんてんの岩礁。
(10)EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
IMG_9012.jpg

立石の夕景を撮影すべく待つかどうかが悩んだが、
他の人と同じ写真を撮っても仕方ないかと思いバスに乗り込んだ。
帰りのバスから何気なく外を見ていると、
逗子駅近くで知り合いが歩いているのを発見!
思わず「今ここ」電話をしてしまった。

今回の撮影でEF-S10-22mmはEF-S17-85mmに比べて、
逆光にかなり強いことが分かった。
EF-S17-85mmは本当に逆光が苦手で、撮影するのに一苦労していただけに、
逆光に強いレンズを手に入れたのは心強い。

東京国立博物館で10月12日まで、
「二体の大日如来像と運慶様(うんけいよう)の彫刻」を開催している。
これも期間までに行かなければ。
海外へ流出騒ぎでニュースにもなった真如苑蔵の大日如来が展示されている。
他に康円(運慶の孫)作で神護寺の愛染明王坐像に会えるのが楽しみである。
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